19 BMW R1200R インプレッション

BMWと言うブランドや、そのオーナーに対して抱くイメージはある程度共通したものだと思いませんか。触れた事も乗った事も無いのに、「BMWオーナーになる事は生涯を通してありえない」と、自分もそう考える一人でした。なんとなくそういうタイプのバイクだと偏見を持っていたのです。そんな自分を恥ずかしいと思います。以下長文です。

いままでの概念を打ち破るインパクトをもちつつ限りなく人に優しいバイク

新型バイクに自由に試乗できるチャンスは中々ありません。うまく機会を得たとしても大抵は短距離、もしくは先導車付きであったりします。自由に飛ばせるのはサーキットにおける試乗会ですが、逆にペースが速すぎたり、路面状況や走る環境が普段とはあまりに違いすぎて、中々正確な評価をしにくいものです。自分はバイクを購入する前に必ず試乗するようにしていますが、2輪専門誌のライターでも何でも無いので、当然上記のような限定された環境で試乗しています。しかし、そんな事では何もわからない、と言う事がよくわかりました。

ある時、夏休みツーリングに出かける数日前に、後方確認を怠って猛然とバックして来た自動車にブツケられバイクごと転倒してしまいました。幸いプロテクターフル装備で乗っていたので、体はそれほどのダメージを受けずに済みました。ただ、バイクの方はツーリングまでにどうにかなるような状態ではありませんでした。それを不憫に思ってくれたのか、お世話になってるバイク屋さんがたまたま自身の店舗の休みと重なる事もあり、BMW R1200Rの試乗車を特別に貸出してくれたのです。ありがたい反面、少し抵抗もありました。高額なマシンであるうえに、車体が大きく重いバイクだったからです。万が一立ちゴケでもしようものなら、目も当てられません。しかし慌ててレンタルバイクを借りるよりはずっとお得で安心だ、とその時は考えました。けれども後から振り返ってみると、これは周到に用意されたバイク屋さんの罠であったようにも思うのです。なぜならBMW R1200Rは一度乗ってしまったら手放したくなくなるとても魅力的なバイクだったからです。数日間に渡るツーリングから戻って来た頃にはすっかりRの虜になっていて、結局無謀なローンを組んで購入してしまいました。(Trickerの前に乗っていたのがR1200Rです。)


R1200Rは日本ではローシート(シート高が最も低くなります)が標準装備となるので、身長175cmの自分が跨ると足つきには全く問題がありません。ハンドルバーはシートが低いために相対的に若干高めの位置になります。シートが低いため着座位置とステップの間隔も近くなってしまうので、長距離を走る時にはひざの曲がりがキツ過ぎることに気がつきました。なので購入後は純正のハイシート(ローシートに比較してプラス6cmスタンダードだとプラス3cm)に交換しました。もともと楽なポジションではあったのですが、ハイシートのおかげでヒザの曲がりがゆるくなったので、さらに快適になりました。足つきは少しつらくなりますが、タンデムシートとの段差も少なくなり、より安心してタンデムが可能になりました。BMWオーナーの皆さんが必ず言う事ですが、発注時にシート高を比較した上で、選択可能にして欲しいものです。

追記 自分の身長と股下の数値がわかっていればR1200Rのポジションチェックが可能です。シートはたぶんスタンダードです。

キーをオンにすると各種の電子センサーが様々なチェックを行う間、少しだけ待たなければなりません。エラーや警告が出なければ、ようやくエンジン始動OKとなります。日本車とは異なる位置にあるセルボタンも外車を感じさせる雰囲気のひとつです。実際にはロングツーリング時に頻繁に操作する他のスイッチ(ウインカー、グリップヒーター等)を優先的に配置しているためでしょう。日本車に比べると各スイッチが大型で一見繊細さに欠けたデザインに感じます。でも厚手の冬用グローブなどをはめている時も、操作性は抜群です。クリック感も明確にあるので、慣れれば非常に使いやすいはずです。

メーターに関してはオンボードコンピュータ搭載モデルをお勧めします。外気温、ニュートラル、ギアポジション、燃料計、時計、平均燃費、平均速度、残燃料量での予測走行可能距離など、多機能です。いままで乗っていたバイクには装備されていないものなので、当初自分はその必要性を全く感じませんでした。ところがロングツーリングで使い込むほど、その利便性と情報は欠かせないものとなりました。中でも現在タンクに残っているガソリンで、残りどれくらいの距離を走れるかが走行中にわかるので、ツーリング時のスケジュールの組み立てやガソリン補給のタイミングなどを考えるのにとても重宝しました。バックライトはLEDですし、各種情報は非常に見やすく表示されます。こう言った要素も短時間の試乗だけでは、ディーラーでのオプション選択時に判断を誤ってしまいそうな部分です。ただメーターの意匠だけは好みではありません。せめてスピード、タコメーターが楕円で無ければと思います。


エンジンは水平対向、いわゆるフラットツインの空冷1200ccです。キーをオンにして前述のチェック終了後、クラッチレバーを握ってスタンドを掛けたままエンジンを始動します。アイドリング時は排気量から想像するよりもずっと抑えられたおとなし過ぎるエキゾーストノートを奏でます。ユーロ規制や騒音規制の弊害で少し残念な部分です。軽くブリッピングしてみると、これまで乗ってきた横置きクランクのツインエンジンとは異なり、左右にぶるぶるっと震えるのがとても新鮮です。跨ってみると両足の前方に片側600ccの巨大な空冷シリンダーがその存在感を強烈にアピールして来ます。最初はちょっと違和感のあるこのエンジンの眺めが、ゆくゆく絶大な信頼感や安心感へと変わってゆくのですから不思議なものです。

軽い油圧クラッチレバーを握ってギアを入れます。詳細は後述しますが、このギアシフトの時に足に伝わってくる感覚が、これまた何とも気持ち良いのです。アイドリング付近の低回転低速域からいきなり大トルクが立ち上がってきそうなものですが、暗に相違してそんな事は全くありません。むしろ気をつけてクラッチミートしないと、アイドリング近辺の極低回転域では、思いの外エンストしやすいので注意が必要です。そこさえ気をつけていれば走り出しはとてもおだやかで、スーッとスムーズにスタートできます。クラッチは乾式単板で操作は油圧ですが、特に扱いづらい事はありません。ただ、ラフに扱うとアッと言う間にクラッチ板を傷めてしまう場合もあるようです。緊張してる自分自身の気持ちをほぐすため、バイクと少しずつ対話するように、なるべく丁寧な操作を心がけます。距離を重ね、少しずつBMW R1200Rに慣れてくるとこのバイク自身の持つ独特の雰囲気、特にその軟らかな感じに驚きます。

話が少しそれますが、実は4輪に関してはドイツ車が苦手です。一言でいってしまうクルマの感触が質実剛健で硬すぎるのです。全てのドイツ車がそんな風に堅固な味付けでは無いのかも知れません。よく出来ているとは思うのですが、あのしっかりどっしりしすぎた剛性感がどうしても小型車好きな自分の肌に合わないのです。なので、2輪のBMWもそう言う造り、そう言う乗り味だと勝手に思い込んでいたのです。それをあっさり裏切るこの乗り心地はいったい何なのでしょう。

例えば高性能サスペンション、オーリンズを装着すると、素人の自分は不思議な感覚を味わいます。乗り心地は明らかに良くなってるのですが、逆に細かな路面の凹凸などいままでより鮮明になって、ライダーに伝わってくる情報量がはるかに多くなる気がするのです。そんな感覚とは少し違うのですが、いつも走っている道がふんわりとした素材でできているかのように思えるほど、しなやかな感触なのです。前後サスペンションは小刻みにショックを吸収し、忙しく仕事をしているはずなのですが、伝わってくる感覚はゆったりしたおおらかなものなのです。大きな段差を通過する際のショックも独特のいなし感でクリアしてくれます。何の根拠も無いのですが、前後サスのバランスや味付けが良いことやバネ上が重い事がプラスに作用しているような気がします。さらにフレーム剛性、ハンドルバー、グリップ、シートやステップのゴム素材等に至るまで、全てが入念に選択、検討され適正化された結果なのではないでしょうか。確認した情報ではないのですが、市販されるまでにテストライダーが公道を試走する距離は、尋常なものではないそうです。

またまた脱線しますが、某レーシングスーツメーカー開発部門にいた友人から、レーシングブーツの底の素材について、話を聞いたことがあります。一見同じメーカーの同じモデルに見えるブーツも、実はGPライダー達それぞれに底が固い方がいいとか、軟らかい方がいい等の好みの感触やグリップ感があって、各人専用に微妙に素材を変えている、と言うのです。ブーツ底を通しステップから伝わってくる感覚でも、マシンのホールド感はもちろんのこと、サスの動きやタイヤのグリップ感までもを得ているので、ライダーの好みによってそれぞれに合わせてその素材を変更すると言うのです。ですから自分達がバイクに乗っている時に触れているグリップ、シート、そしてステップの素材次第で、また自分が使用している用品によってもライダーに伝わってくる乗り心地や感触がおおいに変わってくるのだと思います。

そしてライダーに対して優しいのは乗り心地だけではありません。バイクに乗っていて初めてシフトタッチが心地良いなどと思いました。ミッショッンがクルマのようにヘリカルギアで構成されているからです。アクセルのオンオフに対しても不快なショックが少ないのです。もちろんインジェクションのセッティングや点火マップのセッティングが練られているせいでもありますが、チェーンドライブではなく、シャフトドライブの各パーツ間にあるダンパーも効いているのだと思います。全ての操作感がある種の柔らかな感覚を伴っているのです。詳しくは後述しますが、ブレーキだけは強烈に効くので、ABSの動作を含め絶大な安心感があります。設計思想がどうしても4輪的になるようで、それが良い方向に作用しているように感じます。

特に万が一の転倒時や事故を想定して、ライダーを守るための設計、構造はBMWが他メーカーに対して一歩ぬきんでている部分だと思います。パーツそれぞれの形状に意味があり、非常に良くコントロールされた思想の元で、明確な意志を持って製作されているのです。そんな風に細かくひとつひとつ見ていけばR1200Rの造りに説明をつけてゆく事は可能です。でも、その完成度と志の高さから自分が何を感じるかと言うと、こんなにも自社のバイクが大好きで、妥協する事を知らない人達がモノ造りをしている、と言うある種の確信です。それは一本筋が通っている、なんとも好ましい感じです。もちろん、それは自分の勝手な想像でしかありません。またBMWのバイクが持つ独特のフィーリングをヌルイと感じたり、もっさりしてるとネガティブに感じるライダーもいると思います。それはそれで正解だと思いますし、自分もこの年齢(40歳代)になって乗って、ようやくその片鱗をすこしだけ理解できたと思い込んでいるだけなのかもしれません。

実は何よりも恐れ、疑問を抱いていたのがフロントサスペンション機構です。試乗でbimotaのTesiに短時間乗った事はありましたが、大排気量でテレスコピックフォークでは無いバイクに乗るのはほぼ初めての経験となるわけです。乗り心地が良いのは十分わかりました。では、峠では、ハンドリングは、いったいどうなのでしょうか。これまた衝撃の結果が待っていました。その巨体、車重から抱いていたイメージとは正反対のものでした。ここでも、邪魔をしたのは自分が勝手に作り上げているイメージです。高速道路などの高速コーナーや中速コーナーは得意でも、日本の峠に良く見られる低速で回り込んだルート、さらに高低さが大きくあったり、路面が荒れている状況などは苦手だと思っていたのです。ところが、ライダーが本能的に嫌がるような状況になれば、なるほど、R1200Rがその底力を発揮してくれたのです。

ここから先はBMWのRシリーズのサスペンション構造を知らないと少し説明しにくいです。ただ、自分もフロントサスのテレレバーと言う名前や構造は後から勉強して知りました。事故後、試乗車を借り、そのままツーリングへでかけ、その性能に驚き、帰宅してからいろいろと調べるまではメインフレームが無い事をはじめ、その詳細は全く知らずにいたのです。なので自分でもうまく説明できる自信はありませんし、自分の少ない知識と拙い説明で理解してもらえる自信は無いのですが、以下にテレレバーとはどういう動作をするサスペンションなのかを、可能な範囲で書いてみたいと思います。

まず街中の交差点などでのハンドリングですが、そのどっしりとした巨体とロングホイールベースに似合わず、少し不安定な感覚がありました。軽くバンクさせたつもりが、考えていたよりもバイクがスッと素直に寝すぎてしまうのです。あれ、どうして?とテレレバーを経験してない自分は当初少し戸惑いました。実は、テレレバーはアクセルを開け、バイクの後輪に加重が移動し、フロントフォークがのびると、普通のバイクとは逆にキャスターが立つ構造なのです。そのため、交差店のような小さなコーナーでアクセルを開けつつくるっと回ろうと思うと、バイクが寝やすい状況になっている事を理解していないと、自分で想像してたよりマシンが寝てしまう感覚がある訳です。通常のテレスコピックフロントフォークの構造に慣れきっているので、自然とそこに違和感を感じてしまうのです。

実際にツーリングに出発し、最初は高速道路で一気に距離を稼ぎます。ここではさすがアウトバーンのあるドイツ生まれを実感させる、ゆるぎない直進安定性と絶大な安心感があります。それでありながら、どんな速度域からでもレーンチェンジを、いきなり乗った自分が何の不安もなく行えます。

何よりも楽しいのは水平対向ツインエンジンのフィーリングで、1200ccツインと言う数字から想像されるような強烈なドコドコ感は無いのですが、ツブツブとした鼓動感がエンジン回転数をあげてゆくにつれて、ウルトラスムーズに振動が収束しつつ回って行く感覚がとても気持ち良いのです。そして一定の速度で走っていっても、そこからアクセルをオンオフした時にも、過敏ではない、しかし確実な応えがかえってくる信頼感があります。それ故に、このエンジンを抱えて走っている喜びを、じっくりと噛み締め、いつまでもずっとその感覚を味わっていたい気持ちになるのです。

一方、高速道路を降りて一般道、渋滞などに出くわした時も長いホイールベースのせいか、水平対向縦置きクランクエンジンのせいか、はたまたサスペンション構造やその全てのためか、低速でも安定感があり超低速走行も意外と楽しめます。ローギアのアクセルオンオフについても前述のとおり、シャフトドライブの各ダンパーが効いてるせいでギクシャクしにくいのです。チェーンのテンションを気にしないで済む恩恵のひとつです。ここでまた脱線しますがメインスタンドを立てて、リアホイールを手で回した時にその抵抗の少なさにびっくりしました。チェーンドライブの大排気量車で同じ事をしてみた時とは全く違います。

さて、そんな風にBMWの持つ力に驚きながら峠へと向かいます。ところが本当の驚きはこの後に待っていました。初めて走るルート、それも上りの峠ならまだ気持ちが楽です。でも、それが下りとなり、直線が割りと長い割りにタイトな低速ターンが続き、しかも路面が荒れている、こんな状況は自分のバイクでもあまりありがたくありません。しかも借り物のBMW、初めてのバイクでとなったら腰が引けるのも仕方ないですよね。でも不思議な事に怖くないんです。そんなシュチュエーションでも走る事が……。苦手なタイプのルートを無我夢中で走っているはずが、自分でも気がつかないうちに、いつのまのかその状況を楽しんでライディングしていたのです。それどころか、普通に走っていたつもりでもいつの間にかどんどんペースが上がってしまっていたようで、峠を下り終わりふとミラーを確認すると連れの姿が全く見えません。自分の中では特に飛ばした意識は全くないのにです。ちなみに彼のバイクはBMW F800Sです。正直自分との間にライテクの差はたいしてありません。かつてF800Sを所有していたのでわかりやすいのですが、確かに排気量は自分の乗っているR1200の方が大きいものの車重とパワーのバランスを考えたら、F800Sがそんなに劣るとは思えません。自分は結局このツーリングの後、大借金してR1200Rを購入してしまうのですが、その後様々な友人達とバイクを交換して、乗り比べてみてRシリーズのフロントサスペンションの優位性に気がつきました。

テレレバー構造 フロントフォークの先端はトップブリッジのゴムブッシュにささっているだけで固定されていないサスペンション本体はタンクの前方部分に格納された状態で見えない

通常のテレスコピックのフロントフォークの場合、ブレーキングすると自然とフォークが沈みます。ところが、テレレバーの場合はAアームと呼ばれるパーツ(写真のシリンダーヘッド上からフロントフェンダー上部を結んでいるスイングアームのようなパーツ)が主に減速Gを受け止めるため、フォークはそれほど沈み込みません。さらに通常のバイクはフロントフォークが沈む事で、わずかではあれキャスターが立ちますが、テレレバーの場合はそれとは逆に、なんとキャスターが寝る構造なのです。
ここにふたつの利点があります。ひとつは仮にフルブレーキングしていてもAアームが減速Gを受け止める事で、サスペンションストロークにはまだ余裕がある事です。したがって、ブレーキング時の路面追従性が信じられないくらい良いのです。
もうひとつの利点はフルブレーキングした時点で、通常とは異なりキャスターはわずかでも寝るのですから、フロントフォークは安定方向に働いているわけです。ブレーキングしてフォークをフルストロークさせて、キャスターを立て、しっかりフロントタイヤをつぶしつつ、あえて不安定な要素をつくって寝かしこんで行けるような、プロとかエキスパートライダーは別にして、へたれオヤジライダーにブレーキングからバイクの寝かしこみに至る最も微妙なライディングテクニックが要求される部分で、絶大な安心感を持って乗ることができるのです。こんな風に書くと、ハンドリングに関してはダルで重いかのように受け止められてしまうかもしれません。しかし、履いているタイヤにも拠るのかもしれませんが(自分の場合はMICHELINのパイロットロードでした)、ただひたすらニュートラルであり、積極的に操れば少し大げさな表現かもしれませんが、まるでひと頃はやった16インチホイールが装着されているかのように走ることさえ出来るのです。だたし、安定感抜群の16インチですが……。

褒めてばかりいますが、ネガティブな面も若干ですが存在します。それは「ハンドル切れ角が少ないこと」です。ホイールベースが1,500mmもあるので、狭い場所での取り回す場合はそれなりに苦労します。自分の場合、駐輪場への出し入れに毎回汗だくになって格闘していました。
以上のようにフロントサスに関しては、良い点ばかりが目立ちました。一方これまでシャフトドライブ車に乗った経験がまるで無い自分には、その悪癖と言われるようなネガをリアサス、スイングアームの挙動から感じる事はありませんでした。コーナー進入時にマシンの向きをかえる事や、コーナリング中、バンク時のライン変更も容易でした。ただ、唯一記しておきたい事があるとすれば、アクセルを開けていった時のいわゆる二次旋回が弱いと感じました。ニュートラルではあるのですが、トラクションを駆けて行った時にグイクイ曲がっていくような感覚はやや希薄に思えます。ただ、このあたりはタイヤにもかなり影響を受ける部分なので、ピレリなどに変更することで印象が激変する可能性はあります。

ここで少しブレーキシステムについて触れたいのですが、自分のR1200RはインテグラルABS搭載モデルでした。このシステムはフロントブレーキをかけるとその割合に応じてリアブレーキも同時に作動する、と言うものです。確かずいぶん古いモトグッチなどにも採用されてい記憶がありますが、自分のようなヘタレライダーにはとても有効なブレーキシステムです。減速時の安定感とブレーキの効きは超特筆もので超優れものです。こんな変な表現をしたいくらい尋常でない効きを示してくれます。
具体的に言うと、通常テレスコピックフォーク、通常ブレーキのバイクでフロントブレーキのみを強烈にかけたと想像してみてください。容易にフロントが一気に沈み込む前下がりの状態となった車体状況が思い浮かぶと思います。BMWのインテグラルシステムの場合、フロントサスがテレレバーなので、フロントサスがそれほど沈み込みません。その上同時にリアブレーキも制御しているので、リアも引きずられるカタチで少し沈みます。ですからブレーキング時にライダーがうける印象は、フロントとリアが(実際にそう動くかどうかは別にして)水平状態を保ってグッと沈み込む感じ、なのです。フロントタイヤはもちろんの事、リアタイヤにもしっかりした接地感があり、精神的にとても楽なのです。
例えば慌てて強くフロントブレーキを握ってしまった場合でも、極端な姿勢変化が無いので気持ち的にパニックに陥らずにすみます。そのうえ、そんな状態でもフロントサスの状態は、テレレバー構造のおかげでストロークに余裕があります。これまでと同じ感覚でブレーキをかけるとはるか手前で余裕を持って止まる事が可能です。ともかく、ライダーに負担をかけにくい=極端な前下がり状態にならないので、腕に余計な力が入ってしまうのが避けられ、体にも気持ちにも余裕が生まれます。その上前後同時にしっかりブレーキが効力を発揮してくれるので、制動距離が短くなると良い事尽くめです。

実際にこうしてBMWに乗るまで、最も危惧していたテレレバーはここでも非常に優秀な性能を発揮してくれました。テレスコピックフォーク、通常ブレーキのバイクで制動距離を短くしたくて強力なフロントブレーキを装着すると、ブレーキング時に極端にフロントサスが入ってしまわないように、フロントサスやリアサスをそれなりの状態にセッティングし直さなければなりません。もちろんタイヤのグリップ力にも注意を払う必要があります。しかもテレスコピックフォークがブレーキングによって沈みこむため、フロントブレーキをかける=サスペンションストロークが減った少ないストローク量、作動範囲で路面を追従していく性能が求められます。バイクが極端な前下がり姿勢にならないようにするためには、自分でリアブレーキをうまくコントロールする必要もあります。ところがテレレバー、インテグラルABSは前述のように減速Gを主に受け止めるのはAアームなので、そのような状況でもフロントサスがしっかりストロークして路面を追従してくれるのです。

以上の状況から本来高度なセッティングやテクニックが必要であるブレーキングを、ライダーが自信を持ってこなす事が出来るようになってくるのです。これは自分のように忙しくて中々バイクに乗る時間を生み出せないオヤジライダーにとって、非常にありがたい機構であり同時に武器でもあります。ただ、忘れてもらいたくないのは、自分のテクニックが向上したのではなく、あくまでバイク側がライダーを助けてくれている、と言う事です。ですから過信は禁物です。

そんなブレーキを搭載したR1200Rのハンドリングに何よりも貢献していると考えられるのがフラットツインエンジンです。間近でBMWのフラットツインを初めて見た時は、その大きさとシリンダーヘッドの張り出し、そして路面からの高さ、その圧倒的な造形と存在感に打ちのめされました。そして、この見たことも聞いたことも無いような、経験したことの無いハンドリングは、やはりそのエンジンが大きく意味を持っているのに気がつきました。そうです、縦置きクランクなのです。安心感、安定感があるマシンなのに、同時にこんなにも軽快にひらひらと走れるのはこの縦置きクランクのおかげなのです。こういうことを理解できたのは、試乗後に自分でRを購入して対話を重ね、本を読み、人と話し、レーシングスクールで講師の先生方に質問し、さらに試行錯誤を重ねて長距離を走ってみたからです。それまではむしろ不思議だ?とかわからない?ことの連続でした。それもどちらかと言うとあまりにも今まで乗ってきたバイクの常識に囚われすぎていた自分の固定観念こそが最大の敵だったように思います。長距離、長時間試乗って本当に大切ですね。逆にそのせいでBMWとRの魅力にジワジワと自分の心が侵食されていったのですが……。

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散々述べて来たように、R1200Rは、と言うよりもBMWのバイク全般に共通して言えることなのですが、バイク側がライダーのテクニックをかなりカバーしてくれる、人に対して優しい設計がなされています。ベテランライダー、ライターさんなどのインプレッションを読んでいると、たまにバイク側がライディングに対して介入しすぎると受け止めネガティブな印象を持つ方もいるようです。よくある表現としては「バイクに乗せられている。」みたいな感じです。でも、自分のようなライダーつまりだんだんと歳をとり、少しずつ視力や反応速度、体力が衰えていきつつあるひとりの人の場合、ありがたく感じてもそれを迷惑だとか余計なものだとは全く感じないのです。むしろもっともっと年齢を重ねても、このバイクとだったらつきあっていけると言う自信を与えてくれるのです。長距離を走った時の疲労度が格段に違うことから、いかに楽にライディングできているかもわかります。それは肉体的な面でもそうですが、なによりも精神的に余裕をもったライディングを許容してくれるマシン造りから来ているのです。何度も同じことを繰り返しますが、設計思想が4輪=クルマに近いと感じる所以です。
総じて長距離を走るのに向いていて、長距離を走りたくなるバイクです。それはこれまで述べてきたように、BMWがいままで乗ってきたバイクとあまりに異なるからです。最初は違和感やとまどう事も多いかもしれません。でもそれをなぜだろうと考えたり、逆にBMWに馴染んで来た時、そして少しずつ理解を深めてゆく過程そのものが楽しくてたまらないのです。疲れているときはバイクに乗るのも嫌な時がありますが、そんな時に逆に乗りたくなってしまうような優しさを持ったバイクです。その味わいは深く、簡単には尽きる事がありません。ドイツの設計者やテストライダー、組み立て工が心をこめて造ったマシンが、遠く離れた日本でいま自分の手元にある感激や喜びを常に感じながら、そんなバイクと対話してゆくことは日々を生きる糧にもなるでしょう。
そして自分の行動範囲が広がる事で、新たな世界に出会える可能性まで広がります。望めばABS、トラクションコントロール、グリップヒーター、ESAなど、さらなる安全性や快適装備を得ることができます。BMWは高額なバイクですし、誰にでもオススメできる訳ではありません。ただ、少しでも興味を持てたならレンタルバイクを借りてでも、長距離を走ってみるのが一番だと思います。ただし、自分のように返したくなくなり、購入するに至っても何ら責任は持てませんのでその点のみご了承ください。(^-^)

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ここまで様々なBMW R1200Rの美点に触れてきましたが、まだまだ書き足りません。例えばABSの事やグリップヒーター、パニアケースの利便性、タンデムが大嫌いだった自分が知ったタンデムの楽しさ等についてです。いまとなっては、こんなに素晴らしいと思えるバイクですが、購入前からこれらの性能をすべて理解していた訳ではありません。そうであったなら、もっと早く購入していたと思います。購入動機の決定打となったのはRのデザインです。フラットエンジンの力強い造形と、現行BMWシリーズの中では最もスタイリングが好みに合っていたからです。もともとネイキッドバイクのスタイリングが好きだったのでミニカウルさえ本来ならつけたくありませんでした。要はカッコで選んだのです。Rシリーズ中ではもっとも軽量である点も気に入りました。その時にとても残念だったのは、カラーリングバリエーションの少なさでした。この点はおおいにメーカーさんに検討していただきたい部分です。

現在Rシリーズは着々とエンジンのツインカム4バルブ化が進んでいます。いずれロードスターシリーズにもこの新型エンジンが搭載されることと思います。確か歴代ロードスターは、ニューモデルが出る際に必ずその時点での最新デバイス(トラクションコントロール等)が披露されるのが、ここ最近のならわしであったように思います。時期R1200Rがどのような新装備を纏って登場するのか、いまから楽しみでなりません。(R1200R DOHCついに登場しました)ちなみに、自分はいち素人ライダーで今回のエントリーを書くにあたり、記憶に頼っていてBMWの各名称、機構等の確認をとっていません。記載ミスや誤記等ありましたら、遠慮なくご指摘いただけましたら幸いです。長文を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。拙文が少しでもBMW購入検討時の参考になれば幸いです。

プロのライターさんが書いたインプレッションはこちら。Virgin-BMW R1200R

追記 RはようやくDOHC化されましたがGSは早くも水冷化されるかもしれません。

追記 BMW最新マシンの組立工程やアッセンブリの様子から、テストを経てパッキングされるまでの全工程ビデオはこちら、必見です。

BMWR1200R_A0070430L.jpg

2008 BMW R1200R spec

Thanks My R1200R :-)

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6 Comments

Toshi  

現R1200RとR100GSハリダカ

オーナーさん、新しいR1200Rへのコメントバックありがとうございました。
コメントにも述べましたが、こちらのBMWとの出会いなどのインプレッションも大変参考になりました。
私も始めてRシリーズ(例のパリダカ)に乗った時にも同様に低速が安定していて、低速から高速(納車日に移動するため高速に乗ってしまいました)までスムーズに走ることに驚いたことを思い出しました。エンジンも2バルブでDOHCではありませんでしたが、逆にシャリシャリ感がなく、林道でもゆっくり走れて例のこもった音に好感を持ったものです(数年乗って残念ながら結婚を機に手放しました)。
来年発売されるR1200Rですが、最新のページでおっしゃるように私も現行モデルの方がホイールやエンジン、シートなどのデザインなどが落ち着いていて、特に私たち中年ライダーには合っているように思え、全体的にすでに完成されている感じがし、私もこちらの方が意匠的に好みです。
私は数年前にリターンし、現在中古で入手したK1100RSに乗っていますが、新型車より旧車が好みです。現行R1200Rの方が新型車より私の求めるフィーリングに近い気がします。そういう意味でも貴殿のインプレッションのご報告が大変参考になりました。詳しいレポートに改めて御礼申し上げます。
やはり自分に合った車(バイク)が一番ですね。

2010/11/28 (Sun) 09:54 | REPLY |   

迷走  

Toshiさんこんばんは。
私も友人たちからR80あたりのOHVモデルもしきりと勧められていて、試乗したらきっとやられて買ってしまうと思って我慢しています。最新モデルのみならず古いモデルにもそれなりの味わいがあるので、本当に困ります。Rも確かに魅力的ですが、Kシリーズを所有したことのない私としては、まだドイツ的なデザインテイストが色濃く残っているK1100RSも素晴らしいバイクなのではないかと想像しています。
現行R1200Rと新型は非常に迷うところで、自分自身も一度DOHCエンジンに乗ってみないことには結論が出せそうにありません。ただBMWはどのモデルひとつとっても非常に個性的であることは間違いありません。もし他のモデルや他メーカーのバイクと乗り比べた時に、万が一自分のマシンのネガを見つけてしまってもそれさえ愛すべきクセとして気に入ってしまうのが私たちバイク乗りであるような気がします。
末永くつきあえる1台の選択、悩ましいですがどうぞその過程をも、存分に楽しまれて下さい。
長文コメント、ありがとうございました。

2010/11/29 (Mon) 00:07 | EDIT | REPLY |   

Toshi  

メーターパネル

オーナーさん、改めてのコメントありがとうございます。
ご所有されるバイクのメーターパネルについて勝手なコメント述べて失礼いたしました。実際YouTubeなどで現在のR1200Rのパネルを見ると、特にオレンジのライトに浮かび上がるエンジン始動時のライトなどの立ち上がりの動きはとても美しいものですね。オンボードコンピューターのイルミネーションも含めて、かえって気に入ってしまいました。
新しいパネルも私の好みのオレンジライトかもしれませんが、現在のパネルも大変面白く逆に珍しく良いものであると思いました。

2010/11/29 (Mon) 14:07 | EDIT | REPLY |   

迷走  

Toshiさん、どうもです。
私のいちばんのお気に入りメーターはbimoto db1のVEGLIA製メーターです。透過光の照明ではなく、間接照明なのですがそのなんとも温かな色合いがまるで落ち着いたホテルの室内にいるかのようで、大好きでした。陽が落ちてきてライトスイッチを入れるのが楽しみでした。
R1200Rのメーターもデジタル表示部分が縦型でとても大きく、何より見やすかったです。もしかしたら調整可能なのかもしれませんが、夜間はもう少しだけコントラストがはっきりしていると、さらに良かったと思います。あのオレンジもとてもきれいなので是非実際のロードで体験してみてください。

2010/11/29 (Mon) 16:46 | EDIT | REPLY |   

kuwa  

テレレバーの構造は多分、自動車で言うところのマルチリンクサスペンションなのでしょうね。ボトムするほどプログレッシブ効果が高まって、路面追従性が増しそうです。近頃のBMWの躍進振りは凄いものがありますよね。梨元圭さんのインプレッションにもあるようにスーパースポーツでも今や国産を凌いでいますし…http://blog.livedoor.jp/nashijukuriza/archives/53838776.html

2013/09/30 (Mon) 21:20 | REPLY |   

迷走  

kuwaさん、こんな古いエントリーに目を通していただいて恐縮です。

クルマはリアサスがトレーリングアームタイプのモデルにばかり
長い事親しんでいたせいか、初めてリアがマルチリンクサスペンションの
クルマを所有して路面追従性の高さもさることながら、
ニュートラルな旋回性に驚愕しています。

BMWもVW(DUCATI)もドイツメーカーはかなりヤル気満々ですね。
日本メーカーにも負けずに頑張ってもらいたいですね。

リンク先梨本塾では2ストロークマシンの試乗記に読み入ってしまいました。
TOMINは私も走っていたのですが30秒を切る事さえ出来ませんでした。



2013/10/01 (Tue) 00:39 | EDIT | REPLY |   

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